8月5日、ビスケとの面会。
週末ということもあって、病院は商売大繁盛だ。診察は40分待ち。院長から話があるのでしばらく待ってくれと言うから、2時間以上をビスケとともに過ごし、やっと話を聞いた。
院長「入院治療のビスケのストレス蓄積を考えると、退院して自宅でリハビリをする方が良いかと・・・・・・・・・・・」
私「そんなことは、私がこれまでに何度も申し上げている話じゃないですか。それなのに院長が『責任を持ってビスケの神経回復に努めたい』と言い続けたから、ストレスのの負荷を覚悟で長期入院を続けさせているんですよ。」
院長「徐々に機能は回復するのではないかと期待はありますが・・・・・・・・・・」
私「重度の脊髄損傷を負ったヒトやイヌが『自分の足で歩きたい!』と言う強い意思で厳しいリハビリを続けて、奇跡的な回復をした話、事例は私も知っていますよ。しかし今の院長の立場でビスケにそれを言うのはあまりにも無責任では?」
院長「・・・・・・・・・・・・・」
私「この先々、ビスケの麻痺回復のために、新たに医学的、医術的に具体的な打つ手があなたにはあるのですか?無いのですか? 何か他の手段を考えているのですか?」
院長「医学的には云々カンヌンだが・・・・・具体的にできることに関しては云々カンヌン・・・・・・」
私「それは、もう、わかりやすくハッキリ言えば、『すっかりお手上げ状態だ』、ということなんじゃないですか?」
院長「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私「そういうことならば今日、直ちにビスケを連れて帰ります」
院長「え、今日ですか・・・・?」
私「これ以上ビスケをここに居続けさせる意味がありません。そんなことも有り得るかと考えて請求書を用意して有りますので確認して支払いをお願いしますよ。(1)これまでお支払いしたビスケの医療費は全額返還していただきます。(2)今後のビスケの生活介護費用を60ヶ月分(想定されるビスケの寿命生活期間充当)を補償して頂きます。(3)これまでのビスケの医療データは全てを引き渡していただきます。」
院長「治療費の返還と医療データ引き渡しについては・・・了解しますが・・・・・・、介護費用の補償はできません」
私「そうですか、これから先、障害を抱えたビスケの生活は介護、介助がなければ成り立たないことはご理解なさっているはずですよね?。しかしそれについてあなたはあずかり知らぬ、関知せずと言うわけですね? 院長は何度も自らの医療過誤の責任を認め、責任を取るとおっしゃったはずです。何度も、「償いをする」と発言されたはず・・・。」
院長「・・・・・・介護補償は・・・、この金額は・・・・・できません・・・・・」
私「そうですか・・・・、院長の言う『償い』はやはり口から出まかせだったと言うことを理解しました。当方は法的に争うつもりはありません。あくまでも院長がおっしゃった重大なミスを自ら償うというお気持ちがいかほどのものであるかということに強く期待しているだけです。再考してください。」
院長「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
私「銀行営業日の週明けまで2日間あります、それまでによく考えておいてください」
院長「・・・・・・・・」
帰宅できるんだとわかって喜ぶビスケをクルマの後部座席に乗せて、不注意な医療過誤を起こしたにもかかわらず償いを拒否する病院におさらばした。途中でビスケの主治医であるK獣医師の病院へ立ち寄り、本日退院の経緯を報告した。K獣医師は医療過誤を起こしたこの病院との交流があり、立場的には複雑な心境であるとは思うが、事の顛末、起きたことの全てを曖昧にしておきたくなかったからあえて話した。
医療現場では不可抗力で起きる事故というものもあるだろうということは理解しているから、ビスケの身体に起きたことが手術中に起きたことであったのなら、ビスケにとって不都合な結果に終わっていたとしても、これもビスケの運命だと受け止めることもできただろうが、今回のケースは医療従事者にあるまじき不注意から起きた初歩的なミス、許し難い医療過誤であったから看過できないと考えている。ビスケの下半身は完全麻痺しているのですよ。
さらに、事故直後、重大な事故を起こした事実を隠そうとした、下半身全体が麻痺硬直し、尻餅をついたままで呆然としているビスケを横目に「今日は痛み止めを打っておきました。予約入れましたので3日後に改めてご来院ください」と言って、そのままビスケを連れて帰らせようとした、卑劣な態度をとったことは許せない。レントゲンを撮る前まではビスケは元気一杯に走り回っていたのだ。この院長の獣医師としての能力は存分に発揮されて、ビスケの重度の椎間板ヘルニアは手術によって完璧なまでに治癒していたのだ。院長はやがて学会で発表するときに使うであろう予定の「完治して走り回るビスケ」の姿を、満足げに動画に撮っていたのだ・・・。
この医療過誤の罪の重大さはこの院長自らが最もよく理解しているはずだが、しかし、まぎれもない医療過誤であるにもかかわらず、そのことを彼が認めたのは翌日になってからだった。言い逃れができないなと判断してからは、その後2ヶ月間は「責任を果たしたい、償いをしたい」という言葉を発し続けたが、しかし所詮口先だけだった。責任を果たさない、倫理観の欠けらも無い。
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