7/26/2012

Rancilio SILVIAにAuberのPIDコントローラーを組み込んだ。


最初の加圧抽出エスプレッソマシンはAlessi 9090だった。美味しいエスプレッソを抽出することができるようになる前にパッキンがイカレてしまったのだが、MOMAの永久コレクションデザインのコイツを捨てるわけにもいかないので今や単なる置物。
次なるマシンはdelongiのBAR14だった。此処へ来てから使用再開し、タンピングを改善してショット抽出はかなり良くなったが僕の技術ではBAR14でのスチームドミルクでは水っぽいカプチーノしかできなかった。
次は思い切ってRancilioSilviaV3をNYのショップから(日本国内価格のほぼ半額。Mazzerのグラインダーは半額以下。同時購入で運賃もかなり節約できた)通販購入。しかし実積断トツ家庭用人気上級機種のSilviaV3を使ってもラテアート自由自在レベルのスチームドミルクを作れない。
これまた自分の技術の低さを棚に上げ、マシンの力不足を理由にして新たな手を考えた。抽出温度とスチーム温度をコントロールするためにSilviaへのエスプレッソマシン用PIDコントローラーのビルトインを検討開始。スチームドミルク作りの技術不足なところは機械に補ってもらうのだ。

使用するPIDは米国のAuber Instrumentsのキットだ。スチームドミルクづくりが課題なのでダブルセンサー(Brew and Steam)版にした。これも通販で購入。AuberのセッティングマニュアルではこのPID ControllerをSilviaのボイラー室の下部、グループヘッドとスチームワンドの間にぶら下げるようにして取り付けるとあるのだがこれはどう見てもかっこが悪い。他社のPIDキットもほとんど外部取り付けとなっている。が、ここは面倒でもぜひInstructablesの投稿者redlace氏のようにSilviaの内部へ組み込みたい。氏によれば改造後一年経過するも高温常態下でのトラブルは出ていないとの事なのだが・・・。他も調べたけど国内の日本人でSilviaにPIDを組み込んだヒトはネットで調べても見つからない。みんなそんな事をする暇があったら大金叩いてプロ用マシンを買っちゃうのだろうねぇ・・・。
一方さすが米国はDIYの国。調べてみるとこの類いのコーヒーギークは想像以上にたくさん居る。Auberのマニュアル書も含めて大量の英文を読むのはとても疲れるけど他に手も無くredlace氏を信じて作業開始だ。

しかしSilviaに穴を開けるのは勇気が要る。・・・・・・なのにいきなり取り付けビス穴を太いドリルで一気に開けようとして大失敗、貴婦人の顔が傷物になってしまった。金属面に正確に穴あけするためにはポンチ打ちの後にまず細いドリルを正確なポイントに当てて小さい穴を開けてから徐々にドリル径を上げて目的の穴径にするべきですね。
コントロールボックスの操作面枠のカットもグラインダーで一気に切ってしまおうとして大失敗・・・・の寸前、で慎重に手切りに変更してなんとか被害最小限。グラインダーの高速回転でRancilioマークの下が少し焼けてしまった。手元が狂ってマークにも傷がついた。

PID Controllerの取り付け場所が悲惨な状態になってしまったのでキットに付属しているControllerBox前面の固定枠金属をSilviaの表面に取り付けて失敗箇所を覆い隠す事にした。ちなみにキレイな仕事をしたredlace氏の工作では固定枠は内面にある。
氏のアドバイスに従ってカットの失敗も考慮し、窓枠をまずは小さめに切っておいた・・・、のだが、このままの寸法ではPID Controllerの操作パネル枠の外寸がボディ後方外寸より大きいためにPIDを窓枠へ入れこむことができるのは前面側からだけとなる。となるとSilvia内部で配線済みになっている各ケーブルをこの窓枠から引っ張りだしてController Box背面の狭いスペースに接続するという困難な作業が待ち構えている。
配線作業を容易にするためには枠の寸法を拡げなければならないのだが、ディスクグラインダーが使えない(パネルに焼きが入って変色してしまう)となると根気よくヤスリ掛けで削るしかない。小径電動金属カッターのような金物細工の道具は持っていないのだ。負傷して疼く右手ではこれ以上の力仕事は無理だ。ということで手先の器用さを活かしてなんとかこのまま小さな窓枠の両側でケーブルを引っ張りすぎないように注意しながら配線するしかない・・・・。

PID ControllerのSilviaへの組み込み接続の段取りとしてはキットに付属している10本のケーブルをSilviaの内部各所にしっかり組み付ける作業を先に済ませておかなければならないのだ。インストラクションマニュアルでもそういう手順で説明してある。
Controller Box裏面端子へのケーブル接続はその後からだ。その端子が付いているPID Controllerのボディは窓枠の外で待っているので、Silvia側の必要な箇所に接続されたケーブルをボックス取り付け窓から表へ引っ張り出す。これらのケーブルは全て必要な寸法だけしか無いからこの状態でController Box裏面の狭い場所に集まっている10個の端子にワイヤリングする作業は実に厄介だった。草刈りでひねった右手小指と薬指付け根が腫れて疼いている状況での作業なのでホントに泣けた。
将来もう一度同じ事をやるときにはControllerBoxを内側から取り付けられるように板金作業を丁寧にやらねば・・・。

四苦八苦しながら全てのワイヤリングを終了し、誤接続とショートの無い事を何度も確認して表側から挿入したController Boxと内側で待っている筐体をSilviaのパネルを挟んでボルトで固定してほっと一息。
redlace氏のマニュアル通りに筐体の上下面には熱対策のための空気穴を開けておいた。

最終的にAuberのマニュアルを読み返してキット組み込みの全箇所をチェック。配線ケーブルがボイラーに触ると溶けてショートするので距離を保ち丁寧に束ねてバンド固定する。
ControllerBoxはボイラーのすぐ横だ。下にはスチームワンドへ出て行くパイプがある。これでホントに熱トラブルは起きないのか・・・。多少の不安はあるが、まぁ、Auber推奨の取り付け位置も左に高温のグループヘッド、右にはスチームワンドがあるので似たようなもんだろう・・・。

Controller Boxの操作面固定枠をSilvia本体の表面に被せたので工作に失敗した部分の傷はほぼ隠すことができた。取り付け状態もRancilioマークに水平にぴったり決まっている。

早速電源開通して試運転実施。設定温度まで数十秒で上昇。冬場はもう少し時間がかかるかな。米国のメーカーから直接取り寄せた製品だが表示のデフォルトは摂氏℃になっていた。これは簡単な操作で華氏に変更できる。設定した105℃に達するとControllerがこの設定温度を1℃の範囲内で維持してくれる。設定変更すれば0.1℃単位でも可能。
Silviaの弱点であるスチーミング開始後の温度低下(Silviaのセンサー設定は10度低下してから再暖めするのでスチーミングの最中に温度が大きく下がり続ける)もControllerが設定温度範囲内で制御してくれる。Auberの工場出荷時の設定値ではスチーム温度は140℃でOFF、139℃でONを繰り返しキープしてくれるのだ。もちろんいずれの設定温度も簡単に変更できるが、いくつかのパラメーターのチューンナップは「Silvia+Auber PID Controller」の組み合わせで多くのエスプレッソ・ギークが研究、インターネット上で意見交換などをしており、これを反映させているAuberの初期設定各値でほぼ問題なさそうだ。

SilviaのBrewスイッチをONしてからController前面の">"スイッチを押すと設定した秒数だけ自動でPre Infusionしてから抽出が始まり、ControllerのLEDパネル表示は抽出秒数のカウントダウンに変わる。パウダー量とタンピングが適切なら設定した25秒でクレマたっぷりのダブルショット約<35ml+35ml>自動抽出完了だ。LEDパネルは温度表示に戻る。
これはいい・・・。抽出とスチーミングのプロセスの重要な部分がコンピュータ制御だから安心感がある。抽出の最中に電話がかかってきたり来客があっても慌てないですむ。

工作ついでにSilviaの水タンクにも改良を加えた。このタンクへ水をたっぷり入れてから本体の背後にある空きスペースに納めるのは毎度ちょっとだけだけど厄介な仕事だった。取っ手が無いので水満タン状態でそ〜っと置けないのだ。小さなストレス蓄積。

ホームセンターでステンレスのパイプと受け金を買ってきて細工した。

右手小指付け根の靭帯損傷のためタンピング作業時に痛いからPIDビルトイン後のMs.Silviaの本格稼働はしばらくお預けだ。
今度こそスチームドミルクがうまくできそうな気がするのだが・・・。

圧力計を組み込むスペースもまだ残ってはいるが・・・、圧力計を付けちゃうとかえっていろいろと難しいテクニックを習得する必要がありそうだし、Silviaもそこまでは必要としていないようだからやめておこう。もうすでそこそこ美味いエスプレッソが抽出できてるし。



2 件のコメント:

wowotsuka-ya さんのコメント...

ども,ををつかです。

するってーと,ボスのお宅にお邪魔すると,使わなくなったエスプレッソメーカーが累々と屍を晒していて,1つや2つ頂いて行っても良いという事ですね。

機器を作ってパネル面の加工は神経を使います,既存製品のパネルに穴を開け表示やダイヤルを新設なんて一番やりたくない作業です。四角い大きな穴を開ける時には,小さなドリルでケガキ線の内側に穴を並べ,穴同士を繋げやすりで削って仕上げます。どちらにしろ,電気ドリルは凶暴ですから,充分な注意が必要です。

funkydoggy さんのコメント...

そうなんです。
「小さなドリルでケガキ線の内側に穴を並べ,穴同士を繋げやすりで削って仕上げ・・・」
最初から地道にそうすれば良かったのに右手も痛いし、一気に切ってしまおうと浅はかな考えでした。Silviaのパネルは想像以上に硬度が高く真っ赤に焼けても切れなかった・・・。
結局のところ2.5mmの穴をたくさんあけて切り離してからゴシゴシヤスリ掛け・・・・。冷や汗、脂汗。